
マイページ準備中
大学院で再生医療関係の研究を行っていた髙橋悠太がデンカを選んだ理由。それは学際的な興味がきっかけだった。
「大学では医療関係の研究をしていましたが、必ずしもバイオの枠にとどまらず、分野と分野の垣根を越えた、あるいは異分野を融合するような仕事をしてみたいと思っていたのです」
そこで目に留まったのが、機能性樹脂などの最先端素材からインフラや生活関連素材、さらにはワクチンやヒアルロン酸などの医薬品まで幅広く取り扱うデンカだった。この会社なら、自分が思い描くような仕事ができるのではないか。そう考えて門を叩いた。
希望した配属先はデンカイノベーションセンター。そこで研究職として新製品や新技術の開発に従事することを思い描いていた。しかし実際に配属されたのは千葉工場の研究開発部門での新規成形品設計業務だった。
「驚きましたね。予想もしていなかった畑違いの仕事。CADなんて学生時代は見たこともなく、まずその使い方から勉強することが必要でした」
正直、思い描いていた研究職になれなかった失望がなかったといえば嘘になる。しかし日々仕事と向き合う中で、そんなモヤモヤとした気持ちはすぐに吹き飛んだという。
「任されたのは農業用や工業用に使われるコルゲート管の設計でした。2Dで金型の図面を起こすと、その図面通りのものが3Dになって出てくる。いままでやったことのない分野に触れられて、これはこれで面白いなと。何でも経験してみることが大切だと感じましたね」
コルゲートの設計に携わったのは約1年間だけだったが、その間には自分が設計した部品を敷設する工事現場の立ち合いも経験。「モノづくりの面白さを味わうことができた」と髙橋は述懐する。
入社2年目、髙橋は同じ千葉工場にある機能性シート課へ異動する。ここはポリスチレンをベースとしてさまざまな特性を持つ樹脂シートを製造するセクション。製造上のトラブルやロスを最小限にして、高品質な製品を安定的に製造するのが髙橋たち製造スタッフの役割だ。
当時、機能性シートの製造ラインでは長年にわたり懸案となっていたことがあった。それは溶融した樹脂から発生する揮発分がシートに付着し、シート表面を白化 (材料破壊)してしまう問題だ。
髙橋が異動してすぐ、この問題の抜本的な解決策を探るプロジェクトが立ち上がり、髙橋も参加することになったのである。
「何かいいアイデアはないものかと調べていたときに、たまたまガスの流れを可視化する装置があることに気づいた。もしかすると、これまでうまくいかなかったのは、内部のガスの流れが把握できていなかったためではないか。そう考えて、この装置の利用を会議で提案してみたのです。まだ右も左もわからない素人同然の人間のアイデアでしたが、面白そうだといって採用していただけました」
効果は劇的だった。ガスがどこで発生し、どう流れていくかが一目瞭然となり、対策も明確になった。さっそくデモ機を製作して実証実験で効果を確認。その後、製造設備を大幅に改造することにより、長年の課題を解決することに成功したのである。
「このプロジェクトは工場特別賞として表彰されました。私自身にとっても、ここでやっていけるという自信がついたと同時に、既成概念や慣習にとらわれないことの大切さを改めて認識した出来事でした」
現在も機能性シート課で製造ラインのプロセス改善を担当している髙橋。いまは製造という仕事の奥深さに魅力を感じているという。
「正直、この仕事に就くまでは、製造は機械を動かすだけのルーチンワークだろうと思っていました。しかし実際の製造現場はそんな単純なものではありません。現場では色々なケースの課題が出てきます。きちんと原因を把握し、問題に合った対策を考えなくてはならず常に頭をフル回転させていなければ、対応することができないのです。その上、一分一秒でも早い解決が求められてきます」
製造現場で起こるトラブルは、製品の形状や品質、異物混入、装置の不具合など、実に多岐にわたる。
その一つ一つについて、原因を見極めて、現場の状況に合わせて最適な解決策を見つけ出し、実行する。そのためには化学、機械、物理をはじめ一つの分野にとどまらない複合的な知見と、臨機応変な対応力が求められる。
「新しい事態に直面するたびに、まだまだ足りないものがあることを思い知らされます。まさしく毎日が新しい発見であり、毎日が勉強。どんな事象に対しても、問題点と解決策を理論的に構築し、常に最善の対応ができるように精進していきたい。結果的にこれまで担当してきた仕事は、学生時代の専攻とは違う分野となりましたが、全く悔いはありません。
むしろ、異なる分野を歩いてきたからこそ、いろいろな角度から物事を考えることができるようになったと感謝しています」
髙橋には一つの信念がある。それは「不可能という言葉を忘れれば、実現できないものはない」ということだ。
「かつては不可能だと考えられていたことを次々に可能にしてきたのが人類の歩みです。どんなに困難に思えても、諦めなければ必ず実現できる。とりわけこの化学の分野にはいろんな可能性があります。将来は、デンカが持つバイオや樹脂などさまざまな領域の知見を融合して、画期的な技術や製品の開発に携わっていきたいですね」
私がデンカに魅かれた最大の理由は、扱っている分野の幅の広さです。就職活動ではさまざまな会社の事業内容を比較検討しましたが、弁当の容器からバイオテクノロジーまで扱っているような会社は他にはありませんでした。こうした事業領域の幅広さは、それだけ幅広い知見が会社の中にあることを意味します。この会社なら、事業領域を超えた仕事、異分野を融合するような仕事ができるに違いない。そう考えてデンカへの入社を決めました。
失敗を恐れず、何事にも思い切り挑戦してほしい。就職活動では、いろいろな企業に行き、いろいろな人に会うことをお勧めします。学生時代は自分の専攻を活かして仕事をしたいと考えがちですが、大学や大学院で学んだことはあらゆる事象のごく一部であることに気が付いてほしい。大学で学ぶ時間はせいぜい4年。その結果で社会人生活40年を決めることはあまりにもったいない。専門知識をベースとしつつ、より幅を広げた方が充実した仕事ができる。是非、自分の専攻以外の分野にも視野を広げてみてください。