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大学の薬学部で学び、大学院では分子生物の研究を行ってきた島田。卒業後の進路は、自分が取り組んできたことを生かせる研究職と心に決めていた。同じ研究室の仲間たちが医薬メーカーの営業や開発へと就職を決めていく一方で、島田は飽くまで研究にこだわった。そこで狙いを定めたのが医薬部門を持つ化学メーカーだった。
数ある化学メーカーの中でも、島田がデンカに注目するきっかけとなったのは、ヒアルロン酸を用いた医薬品の製造に携わっていたこと。
「ヒアルロン酸は自身の研究テーマに関わる素材でもあったので、親近感を覚えました。さらに、新たな製品を研究開発し、製品化に移行するまでの一連の流れを若手にも任せてくれるという企業風土も魅力的でした」
入社後、中央研究所生化学研究部(当時)へ配属された島田は、独自の培養技術を用いたヒアルロン酸ナトリウムの生産性向上のための基礎検討を担当する。社内でも近年注目されつつある分野でやりがいもあった。
ただ、実験と報告に費やす時間を上手く配分する難しさにはしばしば戸惑いを覚えた。
「進捗と予定について報告し、一つ一つ着実に進めることを大切にする職場でした。また、上層部への直接の報告会も月に一度設けられている。工場に異動してからも、コミュニケーションがいかに大切かについては常に気付かされています」
試行錯誤しながら日々ヒアルロン酸培養の研究に明け暮れていた島田に、大きなチャンスが巡ってきたのは入社3年目のこと。ラボの小スケールで1年をかけて積み上げてきたデータを上司に報告したところ、実プラントの製造スケールで試験しても良いというGOサインが出た。ラボの段階で、現状以上の生産量を実現するという目標への道筋はほぼ立っていたので、島田は試験の成功を確信していた。
ところが予想に反し、実プラントの試験は失敗に終わった。なんと目標に対し、改良どころか、現状維持もままならない結果となってしまったのである。
実験室で扱える範囲の小スケールと、大量に生産することを目的とした製造スケールでは、どうしても条件が異なるため、ラボでのシミュレーションは緻密に設計しないとすぐに結果が異なってしまう。
「まさかこんな結果になるとは」。驚きを隠せずにいた島田であったが、気を取りなおして原因検証のための試験に取りかかった。その取り組みがようやく結果に結びついてきたのは、実プラントで試験をしてから1年半が経とうという頃であった。ラボで実現できている生産の効率化が、なぜ実プラントでは再現できないのか。
その原因をある程度特定できた島田は、当時をこう振り返る。
「さまざまな原因がありますが、技術的なことよりも、一番は言葉の問題でした。生物の分野、化学工学の分野をバックグラウンドに持つ双方が理解しあえる共通言語でコミュニケーションできていなかった。これが失敗のもっとも大きな原因の一つだと思います」
最近、青海工場の医薬品部医薬技術課へと異動となった。島田は先の試験の結果について原因を追究するなかで、「自分の専門分野の言語だけに頼っていてはいけない」ということを痛感した。なぜなら化学メーカーは、さまざまな分野の人が関わって一つのものをつくり出すからだ。
特に自分の考えを周囲に伝えるときは、どの分野の人が聞いても理解できるような言葉を用いるよう心掛けている。周囲と円滑にコミュニケーションが取れなければ、プラント一つ満足に動かすことはできないのだ。
「工場に異動してからは、研究所で培った視点だけでなく、さらに多角的な視点でものごとを見られるようになったと思います。そしてデンカがコミュニケーションを大切にしていた意味がよくわかりました」
現在の目標は、生物と化学工学、両方の知識に精通することだと言う。
「この2つの分野に通じる人はなかなかいないので、デンカの中でも唯一無二の存在になれたら嬉しいですね」。
一つひとつの製品技術に高いオリジナリティをもって世の中に挑戦していく企業風土があること。そして、若手にも挑戦の場が与えられていること。こうしたチャレンジングな環境のなかで、自分の力で他にはないオリジナルな技術を組み立て、育てていきたいと思ったことがデンカを選んだ理由です。
幅広い領域において、研究開発から製品化までの一連の過程に携わることができるデンカ。ここには、他分野のスペシャリストやさまざまな新しい知識に、日々の仕事を通じて触れることができるという刺激的な環境が整っています。失敗を恐れず、どんどん自分から意志を発してみてください。能動的な姿勢で挑戦することで、道は必ず拓けると思います。