あらゆる英知を結集して多種多様な生産設備を生み出し、
それぞれの工夫・改善を通じて育てていく。
大牟田工場の各種設備のみならず、シンガポールやベトナムのプラント建設も手掛けるエンジニアリング部。機械、土木建築、電気計装を担当する3人のエンジニアが、デンカのエンジニアリングの魅力を語ります。
- 古賀 雄二(こが ゆうじ)
- エンジニアリング(機械系)
大牟田エンジニアリング部 設備課 設備課長
2001年入社
機械システム工学科卒大牟田市出身。青海エンジニアリング部設計課に配属され15年余を青海工場で過ごす。2016年大牟田工場エンジニアリング部設備課に異動となり課長職。趣味はアウトドア。月に2回は家族(妻と子供二人)を連れてキャンプや山登りを楽しむ。
- 清川 泉(きよかわ いずみ)
- エンジニアリング(建築系)
大牟田エンジニアリング部 設備課 土建グループ
1984年入社
建築科卒入社以来、土木建築一筋に歩んできた土建グループの親分。海外プロジェクトの経験も豊富で、通算シンガポールに4年半、ベトナムに約2年の滞在経験を持つ。「片言の英語でも熱意があれば伝わる」と語る。趣味は釣りとドライブ。
- 山手 瑞季(やまて みずき)
- エンジニアリング(電気系)
大牟田エンジニアリング部 電気計装課
2014年入社
電気電子システム工学科卒青海工場に勤める父親の勧めで会社説明会に参加。化学メーカーでありながら水力発電所まで保有するスケールの大きさに感動して入社を決めた。最近はまっている趣味は「ソロキャンプ」。星空を眺めながら料理をつくり、酒を飲むのが最高だとか。
私たちがデンカを選んだ理由
— ではまずはじめに、皆さんがデンカを選んだ理由について教えてください。
- 古賀 -
私は学生時代にインターンで大牟田工場での仕事を体験させてもらった。機械工学専攻なので、化学メーカーというと試験管を振って合成するイメージしかなかったのですが、中に入ると燃焼炉だとか、ろ過機だとか巨大な設備がたくさんあって驚きました。こういうところで大きい設備をつくってみたいなと。重工業メーカーにも興味はありましたが、当時の設備課の課長さんから「うちはプラントをつくるたびにいろんな設備に携わるチャンスがある」と聞いて、こちらを選びました。
- 山手 -
いろんな設備に携われるのは魅力ですね。
- 古賀 -
エンジニアリング会社という選択肢もあったのですが、彼らはプラントをつくって引き渡したらそれで終わり。しかし工場のプラントは竣工後も常に改善や更新を繰り返して性能を向上させていく。最終的な目的は、機械を使って世の中の役に立つ製品を生み出すことにあるわけで、どうせならその最後のところまで関わりたいなと。
- 清川 -
私は34年前に地元の学校の建築科を卒業してこちらの土木建築グループにお世話になりました。先生に「工場にはいろんな建物があるよ」と言われたのがきっかけです。実際入社してみると、小さな工事から巨大なプラントの建設まで普通の建設会社ではできないような仕事ができる。面白いなと思いましたね。
- 山手 -
私のケースは少し特殊かもしれません。実は父がデンカの青海工場に勤めていて、「いい会社だから受けてみれば」と言われて説明会に参加してみました。
— お父さんから会社についてどのような話を聞かされていたのでしょうか?
- 山手 -
実は父から仕事の話をほとんど聞いたことがなくて、説明会で水力発電所や火力発電所まで持っていると知って、すごい会社だなと。さらにシェアナンバーワンの製品がいろいろあることがわかって、最初は電力会社が本命だったのですが、デンカの方が強電から弱電まで幅広い仕事があって面白そうだと思いました。
- 古賀 -
それぞれ出身の分野は違うけれど、共通しているのは、いろんな仕事ができるところに魅かれたということですね。私自身、水力発電所をやったり、医薬品のプラントをつくったり、炉や排水設備をつくったりと、毎回、違う仕事をさせてもらえている。これだけ幅広い経験ができる会社というのはなかなかないと思います。
- 清川 -
次々にタイプの違う仕事がやって来る。飽きるということはないですね。
- 山手 -
その代わり、一人前になるには時間がかかるかもしれません。設備が違えば制御の方法も違ってくるので、その都度勉強しなければいけません。私は入社5年目ですが、最初の2年間は勉強の意味で修理、点検など保全業務を担当。3年目から設計部門に異動になりましたが、まだまだ勉強中です。

若い内から、海外でのプロジェクトを経験できる
— 海外で働く機会が多いとうかがっていますが、実際のところいかがですか?
- 山手 -
私は入社して2年目で、シンガポールのプラントに行かせてもらいました。最初は1週間、次は2週間、その次は1カ月くらい。英語が通じるか心配でしたが、現地の社員さんの中に日本語がわかる人もいて、その人たちに助けられながら仕事ができました。
- 清川 -
デンカは海外にも生産拠点を展開しているので、若いうちから海外経験ができるのも魅力ですよね。私の担当である土木建築はプロジェクトの最初から最後まで関わるので、1回の滞在が7カ月から8カ月に及びます。私も海外ではいろんな経験をさせていただきました。初めて行ったのは1999年のシンガポールのプロジェクト。通算でシンガポールに4年半、ベトナムに約2年滞在しました。
- 古賀 -
最初の赴任のとき、英語はどのくらいできましたか?
- 清川 -
実は初めてのプロジェクトのときには、ほとんど英語が喋れず、会議では知っている単語を並べながら身振り手振りで現地のワーカーに説明しました。英語が堪能なプロジェクトマネージャーには「お前の英語、全然わからなかったぞ」と指摘されましたが、面白いことに誤解なく指示通りに工事を進めてくれたんです。片言でも「伝えたい」という気持ちがあれば、意外と伝わるものだと実感しました。
- 山手 -
それは私も感じました。真剣に伝えたいという気持ちがあれば、聞いてくれますね。
- 清川 -
確かに気持ちが大事です。向こうでは自分がリーダーだという気持ちでやらないと仕事が前に進みません。その場、その場で決断力が求められる。失敗を恐れていたら海外プロジェクトはできないと思います。
- 古賀 -
デンカを代表してそこにいるわけですから。現地の人にすれば、日本から設計者がやってくれば聞きたいことがいろいろある。それに対して自分の頭で考えながら答えていくのは、技術者として鍛えられます。すでに大牟田のエンジニアリング部の若手の8~9割が海外を経験していますが、やはり帰ってくると顔つきが変わります。それだけいい経験になっているということだと思います。

プラントというカタチになって残るからこそ、やりがいがある
—この仕事の面白さについてどのように思われますか?
- 清川 -
土建屋からすると、自分が建設した建物が生涯残るというのが一番大きなやりがいだと思います。実は私、基礎の杭打ちをする時には、安全祈願の意味も込めて一本目に自分の名前を書き込んで打ってもらっているんです。つまり自分の名前を書いた杭がシンガポールにもベトナムにも日本にもある。自己満足かもしれませんが、自分が手掛けた痕跡が世界に残るのは誇らしい気持ちです。
- 古賀 -
やっぱりカタチになるというのは大きい。図面にも設計した人の名前が入っているので、誰がつくったかがわかる。逆に言うと、変なものは残せない。うっかり下手なものをつくってしまったら現場からクレームが来ますからね。
- 清川 -
若い頃に手掛けた建物を見ると、「なんでこんな風につくったんだろう」と思うことがあります。機械を入れることだけ考えて、製造やメンテナンスの際の使い勝手や人の動線まで気が回らなかった。先輩方や製造の人たちから話を聞いて、ああそうだったかと。さまざまな気づきをもらって今があります。
- 古賀 -
設計者は二次元の図面を見ながら、頭の中で人の動きやパイプの中の物質の動きを三次元で再現しなければいけない。それができるようになるには、ある程度の経験が必要です。
- 山手 -
私も仕事をするたびに、もう一回やり直したいなと思いますね。毎回違った発見があって、改善ポイントは尽きることがありません。
- 清川 -
そういう感性を磨くことが大事。やはり最初から100点満点のものをつくるのは難しい。うちのいいところは、進化させていくことができること。改良が必要なら改良できますし、その教訓をまた次の設計に生かすこともできます。
- 古賀 -
もう一つ、我々のようなユーザー系エンジニアリングの最大の特徴は、実際の運転で得たノウハウを豊富に持っていることです。つくってから10年、20年運転してどうなるかというノウハウを持った上でエンジニアリング経験を積み上げていくことができます。設備メーカーでもなかなかそこまでの情報は持っていません。工場には40年、50年稼働している設備もあります。すでに部品メーカーもないので、必要な部品は自分たちでつくってメンテナンスしていますが、まだまだ現役の設備です。その意味では、本当の機械の面白さ、底力を感じることができる仕事だと思いますね。
- 清川 -
私は、デンカの魅力はチーム力だと思います。大型のプロジェクトでは各工場の部門から選抜されたメンバーでチームを組む。初めて会う人もいますが、一緒に仕事をするうちに仲間意識が生まれて、プロジェクトが終わってからもいろんな情報交換ができる。そういう仲間が各工場にいます。
- 古賀 -
いいものをつくろうという気持ちはみんな同じなので、出し惜しみすることなく情報を教えてくれるし、腹を割って話せる。最高の製品を生み出すために、設備も最高のものを目指すことができる。エンジニアとしては一番いい環境だと思いますね。

10年後、20年後の化学プラントはどんなものになるのか
— では最後に皆さんの今後の展望についてお聞かせください。
- 古賀 -
この大牟田工場は電子材料がメインなので、EVや半導体など世の中の電子化・デジタル化の動きと一緒に伸びていくはずです。現在も、新規設備計画が次々に出てきて設計と土建グループで骨格づくりをしていますが、さまざまなプロジェクトが同時に立ち上がっていて、まずはそれに対応していくことが目下の課題ですね。
- 清川 -
今は確かに忙しいですね。来週までに図面を出してほしいとか、今日中に見積りがほしいとか、なかなか厳しいことを言われることもあります。
- 古賀 -
外注していたら絶対にできない。でも我々はプラントを知っているから、圧倒的な早さでできる。急いでやっても大きくは外さない。そこは我々のプライドです。
- 山手 -
今後の課題という点で言うと、工場のIoT化やAIの導入でしょうね。
- 古賀 -
そこは非常に難しい課題ですね。無機化学は石油化学と違い、まだコンピュータによるシミュレーションが進んでいません。しかし逆に言えば、取り組む価値のあるテーマだということです。これまでの経験則をいかにして数値化するか。積極的に検討を重ねていかなければならない時期に来ています。
- 山手 -
今後10年くらいで相当進むのではないかという気がします。そのとき主役になるのは私たち電気計装。IoT化やAIについても知識を蓄えて、あいつに任せれば大丈夫だといわれる技術者になりたいですね。
- 清川 -
建物の設計思想も、昔とはずいぶん変わってきました。機能一辺倒ではなく、どうすればみんなが気持ちよく働ける環境になるかを考えて設計することが求められています。
- 古賀 -
コミュニケーションを意識した設計。ただ机を並べるのではなく、みんなが集まれる場所をあちこちに設けたり、逆にソロワークに集中できる場所があったり。みんなの提案を入れて「できるをつくる」魅力的なオフィスになるでしょうね。
- 清川 -
また一本、杭に私の名前が刻まれる。(一同笑)